今回は、ホルモンのお話です。ホルモンという言葉は、情報番組、病院、はたまた焼肉屋など、様々な所で耳にしますが、実際なんやねん?という方が多いと思います。この本は、身体の中で働く多様なホルモンの役割とそのコントロール方法を明確にしてくれます。
ホルモンをしっかりとコントールする事によって、人生を変える事すら出来ると説かれています。
そもそも「ホルモン」という言葉は1905年(明治38年)、イギリスの生理学者アーネスト・スターリングによって、ギリシア語のhormaeinという言葉から作られました。
元々は刺激する、興奮させるという意味ですから、ホルモンの本質を突いた命名だと言えます。ホルモンとは正に「血管の中を行きかう興奮伝達物質」なのですから。ホルモンは現在100種類以上、発見されていますが、なんと世界初のホルモンの発見は、1901年(明治34年)日本人生化学者 高峰譲吉らによるアドレナリンの発見です。興奮する事を、「アドレナリンが出る」とも、一般に言われる位なのですから、非常に有名なホルモンだと言えるでしょう。
ちなみに焼肉屋でのホルモンという言葉について、自分は長年疑問を持っていました。内臓は食用の肉を取った後の捨てる部分なので、大阪弁で「捨てるもの」を意味する「放(ほ)るもん」から採られたという説が正しいとすると、英語やドイツ語でのホルモンという言葉とは偶然の一致なのだろうかという些細な、しかし頭の片隅に残っていた疑問です。この点に関しても本書の中で明確に説明されていました。
1936年(昭和11年)に東京で開催された「ホルモン・ビタミン展覧会」では、東洋古来のホルモン思想として、ホルモンは人間や動物の内臓や血液に多く含まれていると考えられ、古くから秘薬として珍重されていたと紹介されていたそうです。
大阪のオムライスで有名な洋食レストラン「北極星」が、1940年(昭和15年)に毎日捨てていた臓物を料理に使う方法を編み出し、商標登録を行っていますが、当時認識されていた元気が出る「ホルモン」にあやかったようであり、「放(ほ)るもん」は後付けの駄洒落のようなものだそうです。
ホルモンは興奮伝達物質と定義されますが、人類が進化・進歩していく上でのコミュニケーション・ツールだとも筆者は述べています。我々は親から生まれ、成長して、子供を育て、死んでいくわけですが、親からもらった情報に、自分が経験した新しい情報を付加して、子供に伝えていくための役割をも、ホルモンは担っていると考えられます。
恋愛で異性を求め、関係を持ちたいという欲情は男性ホルモンが主役です。付き合った後の1-2年は幸せ一杯であり、ドーパミン、ノルアドレナリンの分泌が高まり、セロトニンが低下します。その後二人が長いパートナーとして、深い絆で結ばれるか否かは、オキシトシンの力次第です。
こう言ってしまうと身も蓋も無いようですが、ホルモンは自分の力や生活習慣の是正でもコントロール可能である事を、本書は教えてくれます。
ホルモンにコントロールされるのではなく、ホルモンを上手にコントロールして、更に幸せな人生を送るためのきっかけになればと願います。