初めまして。会員制総合健康施設であるカルナ・メドサロンの院長 橋弥尚孝と申します。今回から、こちらで医療にまつわるあれやこれやの本をご紹介させて頂こうと思います。さて記念すべき第一回は宇山恵子さんが書かれた「激務に負けない 名医の養生術」です。
一般的には医者は不養生というイメージがありますね。あの平賀源内が「風流志道軒伝」の中で「医者の不養生、坊主の不信心」と書いたのが最初とされています。自分の周りの医師も、定期的に人間ドックを受けている方の方が少ないかもしれません。医者の不養生にはいくつかの理由が考えられますが、同業者にあまり自分の健康状態を知られたくない、もしくは自分の健康を過信しているといった事があるかもしれません。
しかし勿論、健康に気使っている医師も沢山います。この本には医療業界で有名なドクター35名が各人3つずつの養生訓を挙げています。生活習慣、食事内容、運動療法、精神面など内容は多岐に亘ります。
例えば、大阪大学臨床遺伝子治療学の森下教授の養生は、
- 運動嫌いを克服する
- 新しいことに挑戦
- 「おいしい」幸せを感じる食事
であり、加圧トレーニングで肥満を改善したエピソード等が書かれていますが、それに対して著者は、米国フロリダ州立大学の研究で、太っている事で差別された経験があるとその数年後も肥満のままで痩せられないことが明らかになった点、ハーバード大学の研究で、筋力トレーニングにより糖尿病になるリスクが低下する点、シカゴ大学の調査で、50歳以上でいつも孤独感を持ち続けている人は、4年後に高血圧となっている場合が非常に多い点などをあげ、養生術に更なる説得力を与えています。
元々、養生(生活に留意して健康の増進を図る事)について書かれた本としては、江戸時代の儒学者である貝原益軒の「養生訓」が有名です。これは1712年、貝原益軒が83歳の時に書かれた本ですが、現代人にとっても示唆に富んだ内容になっており、食事内容など身体の養生に加えて、健康長寿のためには、精神面の養生も必要であると説いています。これは本書で多くのドクターが、精神面での充実を養生術に挙げている事と共通しており、興味深いです。
貝原益軒の養生訓には、老子の言葉が引用されています。
「人の命は我にあり、天にあらず」
まずは健康のために自分で出来る事を探すきっかけに、本書を読んでみては如何でしょうか?