今回は「アルツハイマーは脳の糖尿病だった」を取り上げさせて頂きます。ノンフィクション作家の桐山秀樹さんと、大阪大学医学部の森下竜一教授がタッグを組み、最新医学の裏付けを元に、誰もが実践しやすい形でアルツハイマーの予防法について紹介しています。
まずはタイトルが目を引きます。現在日本では急激な高齢化に伴い、認知症患者の数は増加の一途を辿っています。65歳以上の約15%が認知症であり、予備軍も含めると更に割合は多くなっています。認知症にもアルツハイマー病、脳血管性認知症、レビー小体型認知症がありますが、中でも最も多いのがアルツハイマー病患者です。一方で、糖尿病は生活習慣病として広く知られており、男性の16.2%、女性の9.2%が罹患していると言われております。
では、これら二つの気になる疾患が、どのような関連を有しているのか?その点が本書ではわかりやすく説明されています。
実際、糖尿病患者とその予備軍は、そうでない人々よりアルツハイマー病を発症するリスクが4.6倍も高いのですが、その原因ははっきりしていませんでした。ここでポイントとなるのが、βアミロイド蛋白という物質です。
アルツハイマー病は、脳細胞にこの蛋白が沈着する事によって生じると考えられていますが、これを分解しているのがインスリン分解酵素だという事が判明したのです。インスリンは血糖が上昇した際に、膵臓から分泌され、血液中の糖を筋肉細胞に取り込み、身体を動かすエネルギー源に変えるホルモンです。糖尿病の状態だと、インスリンが過剰に分泌されているので、当然その分解酵素も多く必要になります。結果、アルツハイマー病の原因物質であるβアミロイド蛋白の分解が疎かになり、脳細胞への沈着を促進してしまうのです。これが「アルツハイマー病=糖尿病」説であり、糖尿病を引き起こす生活習慣と同じ原因によって、アルツハイマー病が生じるという論拠となっています。
現在、アルツハイマー病については、その進行を遅らせる薬剤はいくつか発売されていますが、根本的な治療の開発には至っていません。新薬の開発には、病態の詳細な理解が不可欠です。アルツハイマー病は発症の10−20年前にβアミロイドの沈着が脳細胞に始まり、老人斑というシミができ、軽度認知障害を生じ始めるのですが、その3−5年前にリン酸化タウという物質も蓄積し始める事が最近わかってきました。このタウ蓄積を抑える事も新薬開発のきっかけになる可能性があります。皆さん良くご存知のウコンも、アルツハイマー病を抑えるというデータはありますが、まだ脳内に大量に送り込む方法が開発されていません。
新薬の開発にはあと最低10年は必要だという見方もありますので、今自分たちにできる認知症の予防方法は、早い段階からβアミロイド蛋白の蓄積を抑えるために、高血糖状態を作り出さないような食生活を実践する事なのです。
今日の食事内容が、将来の自分に繋がっている事を意識して、一食一食を大事にしていくように心がけて下さい。